24話 『ヤンキー彼氏はお徳用・2』

睦は口を塞ぐ手を取ると唇を押し当てた。

「指、舐めてあげる」

 赤い舌が人差し指をべろりとなぞった。尖った舌先が爪の間をくすぐってゆっくり根元に向かって這っていく。生暖かく湿った感触がくすぐったくてぞくぞくする。
 こちらと視線を繋ぎながら吸い付く姿は口淫を彷彿させて、ますます八戸をどぎまぎさせた。そうして全ての指を濡らしたあと、睦はようやく口を離した。

「人差し指ゆっくり挿れて」

 指示されるがままに濡れた手を後ろに回した。バランスが崩れて、睦の顔のすぐそばに片手をつく。食い入るような視線が耐えきれず、八戸は両目をきつく瞑った。彼に覆いかぶさったまま、人差し指を後孔にゆっくりと侵入させる。

「……ぁ……ッ」
「入った?」

 息苦しさに顔を歪めると真下から心配そうな声がした。八戸は眉を寄せたまま頷いた。

「ナカ、どんな感じ?」
「なんか……キツいかも……」
「そう。じゃあ、一回抜いて小指から挿れて」

 薄眼を開くとやはり彼はこちらを見つめたままで、八戸は顔をそらした。そして言われた通りに小指を挿れた。羞恥で全身が燃えている。指を挿れただけで声が漏れた。

「あ……うぅ……」
「ゆっくり抜き差しして。まだ八戸さんのイイところ擦るの我慢な」
「う……」

 睦はベッド脇の戸棚の引き出しに手を伸ばした。使いかけの筒状のローションが音を立てて転がる。それを手慣れた様子で手に取る。最初は童貞だった睦は身体を重ねるごとに余裕を出してくるようになった。八戸がリードしていたのは最初だけで、今では全く手に負えない。
 彼の声に従って己の後孔をほぐしていく。中の指が二本に増やす頃には、身体に力が入らなくなっていた。片腕を突っ張り、四つん這いの体勢を維持するのがやっとだ。八戸の剥き出しの下半身がTシャツの下で主張している。

「八戸さん、目開けて。俺を見て」

 何分かぶりに視界を開く。蛍光灯の白い光がやけに眩しく感じた。睦の熱っぽい目を見るとますます身体が熱くなった。すがるような視線を送るが、睦は動かない。
 己の後孔に二本の指を突き立てながら、八戸は荒い呼吸を繰り返した。

「う……睦……、は……ぁ……んんぅッ」
 
 睦の手がTシャツの中に入ってきて、乳首を摘んだ。八戸はたまらず呻き、踏ん張っていた腕の力が入らず、そのまま睦の胸の上に崩れ落ちた。それでも乳首は摘まれたままで、指の腹で擦られるたびに、後孔が痙攣したように自分の指を締め付ける。

「……ひっ……ぁ……、睦……も……早く……」
「なんか言った?」
「焦らすな……って……んぅ……」
「ちゃんとおねだり」

 濡れた額に張り付いた髪を分ける指は優しいのに、言葉で突き放してくる。
 焦らされて行き場を失った熱が涙になって視界がぼやけた。八戸は恥を捨てて睦に懇願した。

「……もっと……刺激が、欲しい……ッ、ください……」
「八戸さん、最高」

 鋭い瞳を一瞬細めた彼の表情はひどく大人びて見えた。
 肩を捕まれ、強引な力で体勢をひっくり返された。ベッドに仰向けになり、今度は睦が八戸に覆いかぶさる。

「……ぅあッ……ひっ」

 膝の裏を持ち上げられ、緩んだ後孔に睦の指が入り込んだ。彼の指が吸い付くように弱い内壁を擦られ、視界が真っ白になった。

「だめっ……、睦ぅ……我慢できな……ぁっ、あっ……ーーッんぅ」

 再び声を上げそうになって八戸は手の甲で口を抑えた。飲み込んだ声が体内で反響するように背中がびくびくと仰け反る。反射的に逃げようと腰を引くが、逃げた分だけ指も追ってきて八戸をより追い詰めた。内壁を擦られるたびに、きつく押し付けた手の甲の隙間から喘ぎ声が漏れる。八戸自身は硬く張り詰め、先端から透明の雫を滲ませている。

「……んぐッ……ッ、も、イく……イっちゃう……、あっ、もう……ダメ……ッ、んんッ……ーー〜〜〜ッ!」

 両手で口を覆い、八戸は全身を強張らせた。押し寄せてくる強烈な快感になすすべもなく、八戸は震えながら達した。触れられていない性器から白濁が溢れて下腹部を汚す。きつく閉じた目から涙が溢れ、こめかみを通っていった。

「ぁ……ぅう……」
「指、食いちぎられそう」

 体内に指を埋め込んだままの睦が低く笑った。中で悪戯に動かされると、達したばかりの身体には過敏に響く。

「ッ……、それ、今やめて……」

 そう言うと睦はあっさり指を抜いてくれた。そして彼はギラついた目をこちらに寄越しながらベルトを緩めた。ボトムの下からテントを張ったボクサーパンツが覗いた。子供の腕が生えたような狂気的サイズとは対照的に睦は少年さながらの無邪気な笑顔だ。

「見て、八戸さん。すっげぇ勃ってる」

(相変わらずデカイな……)

 思わず生唾を飲んだ八戸に、睦が甘えるように寄ってきて触れるだけのキスをした。片手にはスキンの包みが握られている。

「挿れていい?」
「待って……」
「なに?」
「シャンプー!」
「あっ……」

 「あっ」って言ったよな。今、「あっ」って。

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