23話 『ヤンキー彼氏はお徳用・1』

「勃起したちん こにシャンプー乗せるのが流行ってるって本気で言ってんすか」

 シャンプーチャレンジの概要を説明すると案の定、睦は怪訝な顔をした。今日は八戸がノー残業デーだからと、二人で一緒に晩ご飯を食べた後、八戸の巣であるワンルームになだれ込んだ。

 玄関で靴を脱ぎながら、睦が絶対嘘だと断言するので、スマホの動画を見せてやると顔を引きつらせていた。

「……嘘だろ」
「むつきゅんもやってみない? ちょうどシャンプー買ったから新品あるし」

 八戸は洗面所から、週末に買ったポンプ式のシャンプーを持ってきて睦に掲げた。

「お徳用!」
「このシャンプー好きって言ってたからさ」

 青いパッケージのメンソールのシャンプーは、以前睦が「これスースーして気持ちいいっすね」と喜んでいた物だ。

「ね、駄目かな」

 いつも彼がするみたいに精一杯甘えてみせた。さすがに上目遣いまでは出来ず、恥ずかしさに視線があさっての方向に行ってしまう。

「……八戸さんが手伝ってくれるならいいよ」
「本当?」
「うん……、まあ……」

 やった。これで勃起したむつきゅんの写真が撮れる!
 うっかり緩んだ顔を正面から睦が眺めている。

「またやらしい顔してる」
「し、してないよ」

 慌てて首を振るが、陸はまるで信用してない様子で、シャンプーを手に取るとそのままベッドに腰掛けた。

「八戸さんもシャンプーチャレンジしてよ。ケツで」
「え、尻にシャンプー入れるの」
「そう。これ使って」

 指に引っ掛けて軽く掲げたのは、メンソールシャンプーお徳用。

「ガバガバになるっ!」

 渾身の叫びに睦が弾かれたように笑った。腹を抱えてケタケタ笑う姿はやっぱり少年だなとしみじみ思う。笑いながら手招きする彼に導かれてそのまま隣に座る。

「じゃあ、どうやって手伝ってくれんすか?」
「……口でしようか?」
「んー……、写真撮る時にぱんつ濡れてたら恥ずかしいから駄目」
「じゃあ手でする?」

 返事はない。含みのある笑みでこちらを見つめるだけだ。その笑顔になにか嫌な予感を感じながら、八戸は相手の言葉を待つ。

「……なあ、八戸さんって一人でする時、どうやってるんすか?」

 唐突に話題が飛んで八戸は狼狽えた。

「どうって……普通だけど」
「八戸さんって普通じゃイケないじゃないすか。どうしてんの?」

 普通じゃなくて悪かったな。と、心の中で呟いて聞かれるがままに己の性事情を打ち明ける。

「……そりゃ……ちょっとは後ろ弄ったりするけど」
「ふーん」

 睦は膝の上で頬杖を付いて舐め回すような視線を送ってくる。八戸はたまらず視線を逸らした。やがて、睦は完全にベッドに上がると布団の上に足を投げ出した。

「やってみてよ」
「はっ?」
「八戸さんがいつもやってるみたいに。俺、それ見ながらシコるから」
「な、な、なに考えてんだよ。無理に決まってるだろっ!」

 髪を振り乱しながら首を横に振ったが、睦は全く動じない。

「じゃあ、シャンプーチャレンジも無理」
「う……」
「俺の写真撮りたいんでしょ?」
「いやそこまでしては……」
「撮りたいよな?」
「あっ、はい……」

 十代の少年に圧で負けた。
 悔しさを感じつつも、それでも睦の写真が手に入るなら悪くないと思っている自分もいる。

「じゃ、俺に跨がって」

 ほんの少しの葛藤は、期待で目を輝かせる彼の前に消えた。
 言われた通り、ベッドに仰向けになっている睦を、膝立ちになって跨った。下から熱っぽい視線を送られてくるだけで、煽られる気分になる。

「脱いだ方がいいんじゃないすか?」

 ボトムを引っ張られ、言われた通り下着ごと脱いだ。Tシャツは着ているが、下半身を晒して無防備に跨る状況に胸が高鳴る。寝転んだ睦が茶化すように口笛を吹いた。

「いい景色」
「……何がだよ」

 恥ずかしさにそう返すのがやっとだ。彼の視線に応えるように八戸は自分の体を弄(まさぐ)った。一挙一動に緊張する。真下から注がれる視線が見えない糸になって八戸の全身に絡みつくようだ。当然、一人えっちに集中などできるはずもなく、乳首を擦ってみても感度が鈍かった。

「八戸さん、キスして」

 睦が半身を起こして薄い唇を指差している。八戸は背中を丸めるとその唇に自分の唇を重ねた。じれったい状況に我慢できず、自分から舌を絡めた。睦は八戸を受け入れると背中に手を回して、互いの舌を擦り合わせた。

「ふっ……ん……」

 深いキスを交わしながらも睦の手が胸に回って、服の上から乳首を弾かれ、ぴくりと身体が反応する。それに気を良くしたのか、何度も指で弾かれてその度に鼻から息が漏れた。いい加減息苦しくなってきて、離れようとしたが背中に回された腕が身体を捉えたまま離さない。
 しつこいキスと服の上からの刺激に息と身体の熱が限界になった時、ようやく解放された。身体を反らせて新鮮な空気を吸い込むと同時に両方の乳首を摘まみ上げられた。

「ぁあ゛……ッ」

 電流が身体を駆け巡り、ビクビクと震えた。
 壁が薄いのに思い切り声を上げてしまった。慌てて口を塞いだがもう遅い。恥ずかしさを八つ当たりするように睦を睨む。乳首を摘まんだ犯人は唇の前に人差し指を立てて笑っていた。

(ああ……可愛いな)

 その笑顔にすべてを許す八戸。

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