16話 『ヤンキー彼氏の大きすぎる偏愛・9』

そんな八戸の気持ちが届くはずはなく、睦は落ち込んだ様子で身を起こした。傍らのティッシュで八戸の下肢を拭いてくれた。そんな甲斐甲斐しい彼の髪をそっと撫でてもう一度礼を言った。

「ありがとう、むつきゅん」

 八戸の衣服を整えた後、睦は不意に口を開いた。

「あの、八戸さんって……どっちっすか?」

 「どっち」とは、タチかウケかという話だということはすぐに察した。告白する絶好の機会だというのに、八戸は一瞬口ごもってしまった。その姿に何を思ったのか、睦は八戸の口元に手を置いた。

「あ、やっぱ言わなくていい!」

「え?」

「デカすぎて無理って断れたことあるし、八戸さんに同じこと言われるととショックっていうか立ち直れねぇっていうか。そのせいで俺一生童貞なんじゃねぇかって……」

 そこまで一息でいうと、睦は大きなため息をついてベッドの縁から足を下ろした。そのまま頭を抱えるようにして座り込んだ。

「何言ってんだ、俺……」

(むつきゅん、童貞なんだ……)

 落ち込む睦を見ながら、八戸は思いもよらぬ告白にほんの少し心が踊った。彼の初めてになるのは素直に嬉しい。背中を丸める彼にどう接するべきかと迷っていると彼は振り返らないいまま呟いた。

「挿れられるのなんて絶対に嫌だって思ってたけど、……その、俺、頑張るんで」

「な……、何を……?」

 急に雲行きが変わって、八戸は眉を潜めた。

「何をって、言わせないでくださいよ」

 いや、これ言葉責めじゃなくて確認だから。

 しかし頬を赤らめる睦は満更でもなさそうだ。

「年下に掘られんのは嫌って人ネットで見かけたことあるし……」

(ごめんなさい、俺は相手の年齢に関係なくいつも突っ込まれてます)

 このままでは誰も幸せになれない未来にたどり着いてしまう。

――俺はバリウケだから、その努力は俺が引き受ける。ガンガン掘ってくれって言え!言えよ、俺!!言うんだ!!

 しかし、口から溢れたのはなんとも情けない強がりだった。

「むつきゅん、俺はどんな形でも君と繋がれたら嬉しいよ」

「八戸さん……!」

 睦がときめいたように目を輝かせている。

 なに格好つけてるんだよ! 俺のバカバカバカ!!

 八戸は甘えるように抱きついてくる睦を抱きしめ返しながら、ますます言い出しづらい状況に自らを追い込んでしまった自分を呪った。

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