13話 『ヤンキー彼氏の大きすぎる偏愛・6』

「ごめんね、本当に散らかってるから」

 そう前置きしてワンルームの部屋に招き入れる。彼を迎えると思っていなかったから、普段どおり散らかっている。男性アイドルのグラビア目的で買った女性誌だけはすぐに隠したが、それが以外は服が散らばっているごく一般的な男性の部屋だと思いたい。

「こんなもんじゃないですか」

 そんな簡単な感想を言って、睦はぺちゃんこの座布団の上にあぐらをかいた。自分の居住空間に睦がいるという状況になんだかどきまぎしながら、その隣に腰掛ける。こちらの緊張が伝わったのか、なんだか変な空気だ。

「シャワー浴びる?」

 和ませるつもりで言ったが妙な間があって、八戸は慌てて首を横に振った。

「いや、変な意味じゃなくて!」

「変な意味じゃないの?」

「いや……、えっと……」

 すると睦がずいとこちらに体を寄せて、耳打ちしてきた。

「俺とヤりたくねーの?」

 囁かれた耳から感染していくように熱が顔全体に広がっていく。

 観念して頷くと、睦は堪えきれない様子で喉奥でくつくつと笑い出した。

「八戸さんって正直だよな」

「むつきゅん、俺シャワー浴びてくるから!」

 八戸は立ち上がると逃げるようにバスルームへと向かった。扉を閉めると睦の弾けるような笑い声が聞こえてきた。

 十八歳の少年に弄ばれている。

 浴室で降り注ぐ生ぬるい湯を浴びながら、八戸は大きなため息をついた。

 一回りも年下の相手にこんなに主導権を握られるとは思ってもみなかった。

(ますます「バリウケです」なんて言えない……)

 さらに主導権を握られてしまうだろう。一応、八戸にだって年上としてのプライドだってあった。

(むつきゅんって、多分、男初めてだよな)

 キスは慣れていたように思ったが、告白の仕方や距離の詰め方の青臭い部分が気になる。もしかするとあまりセックスにも慣れていないのかもしれない。

(リードするのは別にいい。むしろ大歓迎……)

 そして願わくば彼の上で腰を振りたい。

(駄目だ! 絶対引かれる!!)

 ブンブンと頭を振ると水しぶきが舞った。ここはやはり大人の立場として、スマートに振る舞いたい。

(まずむつきゅんにどっちがいいか、聞いてみよう。もしウケがいいって言われたときは……やるしかない)

「がんばれ、俺……!」

 八戸は足の間にぶら下がる相棒に一言かけてから、浴室を出た。

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